dear

大学生 そのとき書きたいことをそのまま

優しい人へ

1月の12日から15日まで帰省していた。高校の同窓会に出ることと、成人式を終えた友達の写真が撮りたくて。振袖なんかに回す金があるなら旅行に行きたいと思いそのぶんは貯金に回した私は成人式には出ない。

 

私は変なところでプライドが高い。全力で可愛くしてのかわいいかわいくない褒められた褒めてもらえなかったの応酬がすごく苦手なのだ。惨めな思いはしたくない。

 

12日の夜、家に着いてからすぐにシャワーを浴びて、着替えてメイクをして、高校の同窓会に行った。結婚式なども行う結構ちゃんとしたパーティー会場で。ドレスアップした女の子たちにおお華やかな、と思った。古着屋で買ったモスグリーンのワンピースに真珠のピアスとネックレスをして、灰色のジャケットを羽織った。気に入っている。英語の先生には上から下までじろじろ眺められたのち「あんた意外と地味だね」と言われた。地味で結構。私は今日の私のスタイルに納得している。友達が1番綺麗だよなんて言ってくれたので満面の笑みで返してしまった。

 

高校の時によく一緒にいて仲良くしていた友達は、皆私と共に東京に出てきている。今でも月に1度くらい会う。同窓会にいるのは皆卒業以来一度も会っていないような人達だ。

 


高校時代の私は毎日遅刻か欠席かどちらかをして、課題を出さず、寝てばかりいるような嫌なやつだったから、悪意を持っている人もいるだろうと思う。皆と仲がよかったり人の中心にいるようなタイプではない。私は、私とは違う、地元ではない国公立大学に行った友人に会いたかった。開始ギリギリの時間に会場に入ってきた彼女に思わず駆け寄っていた。

 


「1番会いたかったよ」
「私も1番会いたかった」

 


ふふ、と笑う。いちばん。狡い響きだ。同窓会で1番会いたかったと言い合うのなんてちょっと秘密の悪いことをしている気分。

 

彼女は出席番号が近かったのもあり席が近く、毎日(と言うか私が高校に行っている日は)一緒にお昼ご飯を食べ、数学の問題を共に解いた、清潔感あるすっきりとした顔と信じられないくらいすらりと美しい脚を持つ女の子だ。

 

周りの女子高生のように放課後カラオケやプリクラに一緒に行ったことはない。遊びに行ったことも、あったかな?教室に残って勉強していた帰りに買い物に行ったくらいだと思う。ただ、15歳から18歳の時期を長く一緒に過ごしているので、私にとって、高校の思い出は彼女と共にある。

 


高校の頃、気付いたらいつも違う男の子と付き合っていた私にどうやったら恋人なんてできるんだ、くそー、などと言っていた彼女も大学に入ってからもう2人目の恋人だと言う。クラスの卓に衝撃が走る。ああ、皆の脚だったのに、いやどうゆうことよ、あの…がねえ、人は変わってしまうんだなあ。

 


彼女は私と違ってなんとなく誰からも好かれていたのだ。

 


大学に入って数ヶ月経ったばかりの頃、彼女が一度電話をしてくれた。皆にはなんだかいえないんだけど、競技ダンスを始めたのだと言う。大学に入ってからすごく色んな人と出会った。両親と改めて合わないところに気がついた。等々。嬉しかった。楽しそうに大学のことを私に、話してくれるのが嬉しかった。とてもかわいいなと思った。素直なのだ。真面目なのだ。それはたいへんな美徳だ。

 


競技ダンスというものが私達田舎で育った人達に受け入れられるんだろうか、なんとなく言いにくい、というのは、少しわかる。彼女の出身地は私達の高校があった市よりもさらに田舎で、彼女は寮生だった。田舎の保守的な空気のことは私よりもわかっているだろう。

 

食事の最中に何かサークルとか入っているの?と聞かれた彼女が競技ダンスをやっている、と言って動画を見せると皆口々にかっこいい、すごい、なんだこれ、などと心からの感嘆の声を上げていた。私は隣でニヤニヤしてその光景を眺めていた。

 


同窓会が終わって、会場のロビーで彼女も含め数名で話していた。来月、大会があって東京に行くと云う。会いたい、話そう、もっと話したいことがたくさんある。そう言い残して彼女は帰っていった。

 

来月、私達は本当には会わないかも知れない。私達はお互い、きっと、それなりにお互いを特別に思っていて分かり合えている、けれどもこの2年間会わなかったのだから。

 

それでも東京に行くから会おうよ、本当に!と必死に言ってくれる。素直なのだ。抱きしめてしまいたかった。

 

 


さて14日。成人式を終える。夜、中学の同級生に飲みに行こうと呼び出された。後から男子も4人くるぜ、とも。正直4人のうち2人はまともに会話した記憶もなかったけれど、私達計7人は学年50人しかいない正規の中学の同窓会をつまんなさそうだとか嫌いな奴がいるだとかお金の無駄だとかとにかくそれぞれの理由で欠席している人たちで、まあなんとなく、親近感がある。

 

飲み屋で、男の子のうち1人が彼女と別れそうだという話をずっとしていた。

 

「クリスマスプレゼントにさあ、あっち看護学生で受験あるから大変だろうなと思って電気ブランケットと加湿器買ったわけよ」
「優しいじゃん」
「そうしたら私部屋に置くものには拘りあるからちょっと…って言われて」
「はあ?」
「友達に彼氏にクリスマス何もらったの?って言われてこんなの恥ずかしくて言えない、って言われた」
「なんだそれ何様よ」
「これ第1弾だよね?まさかプレゼントこれで終わりじゃないよね?って言うからヤケになって次の日1万のアクセサリー買ってあげたけどね」
「いやお前…」
「ホワイトデーも、手作りケーキとか憧れるって言うから朝から起きて作ったんだよ俺。なんだけどなんか微妙そうな顔してて…だから後でそういやGODIVAのチョコ食いたがってたなと思ってあげたの。そしたらこんな食べ物ばっか貰っても、インスタにあげても微妙じゃない?って言われて。あと俺今日誕生日だけど何も祝って貰ってねえな」
「「「「「「別れな?」」」」」」

 


とても悲しい話だ。

 

二次会でカラオケに移動するときもタクシー代を全て出してくれていた。場を盛り上げるために身体を張って声を張り上げ、酒を飲み、踊り、場を回していた。才能があると思う。よく通る声をしている。話がうまい。よく周りを見ている。気が効く。ウザいウザい、なんて言われながらも皆彼のおかげで楽しい空気に酔っていた。私にはできない。

 


すげーいいやつだよ。お前。なんでそんなお前の良さをわかってくれない女の子に振り回されちゃってんだよ。

 


カラオケは4時まで続き、皆とても疲れておかしくなっていた。とりあえず手を上げて振って跳ねて叫んでいた。帰り、私は彼と同じ方向だったので2人でタクシーに乗った。私達2人だけはあまり酔っていなかった。


「お疲れ様。本当にありがとうね今日」
「全然。俺はいじられる役でいるのが1番楽なんだよ」
「それは勝手だけど自分を大事にしてくれない人と一緒にいてもこっちだけ削られるだけだぞ。お前いい男なんだから絶対」
「いいこといってくれんじゃん…昔から相談乗って貰ってばっかだったなそういや」


俺はお前みたいに器用になりたかったよ。


彼がそう呟いた。

私は器用なんだろうか。


私は、

そうやって皆に楽しい空気を提供できるところも自分にしっかりと愛を与えてくれるともわからない相手でも悪口1つ言わず大事にしてしまうところも自分の身を考えずまず他人のために行動してしまうところもワンチャンない女の子にも平等に優しく接することのできるところも、貴方の方が余程優れた人間だと思っている。


言わんけど。


時折自分は実はすごく嫌なやつなんじゃないかと思うことがある。傲慢なのだ。優しくないのだ。真面目さも素直さも私の憧れるものだ。それなのに当人達はその不器用さを悔いこんな私なんかを評価してくれる。

 

違うんだよこんなの、と叫びたくなる。ちょっと斜に構えているだけだ。そりゃあ本心からこう在ろうと信念を持っているところも多少はあるけれど、何が本当かなんて自分じゃ何もわかっちゃいない。

 

好きだから、何かしてあげたいから、そんなシンプルな根拠で動いてしまう貴方達の方が余程尊いのに。

 


正直者が馬鹿を見る、でもないけど彼等がなんだかんだいつも損をしているのだ。ちょっと計算高くて狡い奴が憧れられてモテて出世するのだ。


声を大にして言いたい。この世に貴方達のことを本当に嫌っている人は1人もいないのだと。いじられ役に回り、見下されるようなことすらあっても、絶対に皆心のどこかで感謝していて嫌えない。絶対に分かっている。他人から悪意を向けられたことのないというのがどれだけすごいことか、と優しくない私は思う。


絶対言わんけど。

 

悔しいからね。私は私で、嫌な奴だな、と嫌っている人もいるだろう分本当に私を特別に好いてくれる人もいるので。そう変えられない性質だと思う。万人に好かれるような人間にはなれない。それはそれでいいと思っている部分もある。ただ憧れている。

 

素直で真面目でとても優しい貴方達のことが私は本当に好きだ。